Windows Server IoT 2019 for Storageについて
Windows Server IoT 2019 完全解説
2020年現在、Windows Storage Server 2016の後継である、Windows Server 2019をベースとしたファイルサーバ専用のOSであるWindows Server IoT 2019について解説します。
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2020年現在、Windows Storage Server 2016(以下、WSS2016)の後継として、Windows Server 2019をベースとしたファイルサーバ専用のOSが発売されています。
この、Windows Server IoT 2019はOS単体での販売は許可されておらず、Microsoft社とOEM契約を結んだベンダーから機器にプリインストールされた状態で提供されます。
製品としての役割が変わることはありませんが、名称やエディションについて今までより複雑になりました。前段として、Microsoftの組み込み機器向けOSについて説明し、最後にWSS2016との違いを簡単に紹介します。
1. Windows for IoT
MicrosoftはWindows 10 IoTなどの組み込み機器向けOSを総称して、Windows for IoTと呼んでいます。以下の4製品で構成され、最大の特徴は、10年間の標準サポートが提供されることです。
【Windows for IoT製品群】
Windows IoT製品
説明
Windows 10 IoT Core
小規模なスマートデバイス向け
Windows 10 IoT Core Services
Windows 10 IoT Coreベースのスマートデバイスの商用化に必要なクラウドサービスをまとめたOS
Windows 10 IoT Enterprise
機能制限なしのバージョン
Windows Server IoT 2019
サーバ構築に対応するOS
2. Windows Server IoT 2019
Windows Server IoT 2019は、Windows Server 2019と同等のバイナリです。そのため、開発や管理に必要なツールをいつも通り使用することができます。使い慣れたツールをそのまま使用できることは大きなメリットと言えますが、提供される機能や条項がSKU毎に細かく定められており、購入するライセンスには注意が必要です。ライセンスやサポートを比較すると、以下のような違いがあります。
【Windows Server2019とWindows Server IoT 2019のライセンス/サポート比較】
項目 | Windows Server 2019 | Windows Server IoT 2019 | |
販売形態 | OS単体での購入が可能 | OEM専用 | |
使用目的 | 制限なし | 組み込み専用 | |
サポート | 長期サービスチャネル(LTSC)、半期チャネル(SAC) | 長期サービスチャネル(LTSC)による10年間のサポート | |
SKUs | Datacenter Standard Essentials |
Datacenter Standard Essentials Storage (Standard/Workgroup) Telecommunications |
|
CAL | クライアント数による | Datacenter Standard Essentials |
クライアント数による |
Storage Telecommunications |
不要 |
Windows Server IoT 2019 のSKUは6種類あり、それぞれで提供される機能は以下の通りです。
よくNASで使用されていたWindows Storage Serverの後継は、Storage Standard/Storage Workgroupであり、使用する環境の規模で使い分けることになります。
【Windows Server IoT 2019 SKU】
SKU
サーバアプライアンスとして提供する機能
Datacenter
すぐに作動できる、仮想化されたデータセンターまたはクラウド環境
Standard
Active Directory統合(ファイル、印刷、ネットワークサービス)、
または専用の目的を実行するためにKVMが必要なサーバ
Essentials
ウイルス対策、電子メールフィルタリング、ネットワークトラフィック監視などのエッジセキュリティ
Storage Standard
NAS、SAN Gateway、または別のストレージソリューション
Storage Workgroup
ネットワークインフラストラクチャサービス(ファイル、印刷など)、
またはKVMを必要としない小規模なストレージソリューション(50ユーザ以下)
Telecommunications
PBX、IP PBX、自動応答、インタラクティブ音声応答(IVR)、
電話会議などの特殊な電話通信アプリケーション
通常のWindows Serverとは別に、組み込みOSとして個別に製品化しパッケージする製造コストやメンテナンスコストをなくすため、1つのバイナリパッケージのみでSKUを細かい用途に分け、使用できるライセンス条項を振り分けていることがわかると思います。
バイナリ自体に制限はかかっていないため、購入したSKUのライセンス条項に限らず全ての機能が使用できてしまいますが、Microsoftがコスト削減を重要視したと考えることもできます。
【Windows Server IoT 2019 主要ライセンス条項】
ライセンス条項 | Standard | Datacenter | Essentials | Storage Standard | Storage Workgroup | Telecommunications |
プリインストールOS | 必須 | 必須 | 必須 | 必須 | 必須 | 必須 |
組み込みアプリケーション | 必須 | 必須 | 必須 | 必須 | 必須 | 必須 |
基幹業務アプリケーション | No | No | No | No | No | No |
ネットワークインフラストラクチャサービス | Yes | Yes | Yes | Yes | Yes | 制限あり |
KVM | Yes | Yes | No | No | No | No |
ネットワークファイルサービス | Yes | Yes | No | Yes | Yes | No |
認証サービス | Yes | Yes | No | No | No | No |
CAL必要 | Yes | Yes | No | No | No | No |
企業向けメールのメッセージ送信 | Yes | Yes | POP3 | No | No | Yes |
Firewall,anti-spam,VPN | Yes | Yes | Yes | Yes | Yes | Yes |
Core単位のライセンス | Yes | Yes | Yes | Yes | No | Yes |
3. Windows Server IoT 2019 for Storage
Windows Server IoT 2019について理解が進んだところで、新旧Windows Storage Serverの機能を比較してみようと思います。
Workgroupに関しては、最大同時SMB接続数の上限が解除されたことで、最大物理メモリの制限も解除されているようです。使いやすくなったのではないでしょうか。
Standard では、物理CPUの個数制限が解除されています。重複排除が使用しやすくなったと考えますが、そもそもこの機能はサードベンダーのバックアップツールやrobocopyなどの親和性が低く、言及しにくい状況です。
【Windows Storage Server エディションの機能比較表】
機能 | Windows Storage Server 2016 WorkGroup | Windows Storage Server 2016 Standard | Windows Server IoT 2019 Storage Workgroup | Windows Server IoT 2019 Storage Standard |
ハードウェア | ||||
物理CPU/仮想OS数 | 1CPU/なし | 2CPU/2仮想 | 1CPU/なし | 制限なし/2仮想 |
最大物理メモリ | 32GB | 24TB | 24TB | 24TB |
最大ディスク数 | 6本 | 無制限 | 6本 | 無制限 |
ハードウェアRAIDのサポート | 6本 | 無制限 | 6本 | 無制限 |
ユーザー | ||||
最大同時SMB接続数 | 250 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
最大登録ユーザー数 | 50 | 無制限 | 50 | 無制限 |
ソフトウェア | ||||
ファイル共有 | ○ | ○ | ○ | ○ |
オンライン バックアップ | ○ | ○ | ○ | ○ |
DFSレプリケーション | ○ | ○ | ○ | ○ |
ファイル分類インフラストラクチャ | ○ | ○ | ○ | ○ |
ファイル サーバー リソース マネージャー | ○ | ○ | ○ | ○ |
ドメイン参加 | ○ | ○ | ○ | ○ |
共有ブロック記憶域 | ○ | ○ | ○ | ○ |
OEMカスタマイズされた Out of Boxエクスペリエンス |
○ | ○ | ○ | ○ |
記憶域スペース | ○ | ○ | ○ | ○ |
重複除去 | – | ○ | – | ○ |
BranchCach – ホスト型キャッシュ | – | ○ | – | ○ |
クラスタリング | – | ○ | – | ○ |
簡略化されたクラスターのセットアップ | – | ○ | – | ○ |
ネットワーク インフラ(DHCP/DNS/WINS) | – | ○ | – | ○ |
記憶域スペース ダイレクトとボリューム レプリケーション | – | – | – | – |
Active Directory (ドメイン コントローラー、証明書サービス、 Federation Services、Rights Management) |
– | – | – | – |
アプリケーション サーバー、ネットワーク ポリシー、 リモート デスクトップ接続ブローカー、WDS と Fax サーバー |
– | – | – | – |
最後に、新旧Windows ServerとWindows Storage Serverのライセンス比較ですが、変更点はありませんでした。
【一般のWindows Serverとファイルサーバ専用Windows Serverのライセンス比較】
項目 | Windows Server 2016 | Windows Storage Server 2016 | Windows Server 2019 | Windows Server IoT 2019 for Storage |
販売形態 | OS単体での購入が可能 | OEM専用 | OS単体での購入が可能 | OEM専用 |
使用目的 | 制限なし | ファイルサーバ | 制限なし | ファイルサーバ |
ソフトウェアのインストール | 制限なし | 制限あり | 制限なし | 制限あり |
データベース(SQL Server)の利用 | 制限なし | SQL Express版(非エンタープライズ データベース) | 制限なし | SQL Express版(非エンタープライズ データベース) |
CAL(クライアントアクセスライセンス) | クライアント数による | 不要 | クライアント数による | 不要 |
(2020年11月掲載)