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SCSIとは?パラレルからSASへ

Ultra320SCSIからSASへの変遷

SCSI規格で最後に製品化されたのはUltra320SCSIです。この項では、その最後となるUltra320SCSIからSASに向けての流れをご紹介します。

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本ページに記載された技術情報は記事が出稿された時期に応じて推奨システムに対する考え方や実現方法が書かれています。
したがって、最新技術でのシステム構築を前提とし、この情報を利用する場合、その記事が時代に沿わない内容となる事もありますので予めご了承ください。

パラレルSCSIは様々な環境に浸透し、長年にわたり幅広く支持されてきました。2000年にはUltra640SCSIの規格が騒がれ、2001年にはUltra1280SCSIの規格プランが提案されました。このままパラレルSCSIは進化していくと誰もが思っていました。ですが2003年、SCSIロードマップからUltra640SCSIの名前が消えました。実際に製品化されたのはUltra320SCSIが最後となったのです。この項では、その最後となるUltra320SCSIからSASに向けての流れをご紹介します。

未来を目指したパラレルSCSI規格

SCSI規格が今日まで普及し、成功してきた要因のひとつにSCSIインターフェイスとSCSIプロトコルの存在があります。
SCSIプロトコルは、コンピュータの処理速度向上に合わせ、1981年から世代を重ねるごとに前世代のほぼ2倍の高速化を実現し続けてきました。そしてパフォーマンスが上がっても下位互換性を失わないSCSIインターフェイスのおかげで、SCSI規格はパーソナルコンピューター、レガシーデバイスだけでなく、RAIDなどサーバストレージ系にまで広く普及し活躍しました。このパラレルSCSI規格には誰もが期待し、実際にUltra640、Ultra1280などのハイパフォーマンスSCSIの検討もされていました。

SCSI転送速度

パラレル通信の限界

4MB/sのデータ転送だったSCSIから、チャネルごとに320MB/sのデータ転送を可能にするUltra320SCSIまでたどりついたパラレルSCSI規格でしたが、その開発は予想以上の困難を極めました。
Ultra320SCSIでは320MB/sを実現するために信号はかなりの高周波となり、信号の反射、減衰、様々な外部の干渉などの影響を受けるようになりました。さらに、パラレルデータ転送では複数のライン上を各種信号が並列転送されますので、ホストから一斉に出たデータもデバイス側にはバラバラに到着すると言う問題がありました。このデータ到着のズレはスキューと呼ばれ、SCSIが高速になればなるほど大きな問題となり、Ultra320SCSIではかなり深刻な域にまで達していました。
これら数々の問題は、Ultra160SCSIから採用されたドメインバリデーション機能(運用中にバスエラーが発生した場合、転送速度をデバイス間で自動調整し、正常なデータ転送を可能にする技術)や、フェアネス機能(複数のSCSIデバイスのバス占有率を均等に調整する技術で、RAIDなどSCSIストレージの運用に大きく効果を発揮)をもってしても解決することは出来ませんでした。

そのため、Ultra320SCSIを実現するには幾つもの技術開発を必要としたのです。
そして、当初描かれていたUltra640SCSIなどの構想も、このUltra320SCSIで直面した様々な技術的問題を踏まえ、もはや新たなテクノロジーなしでは開発不可能と結論づけられました。
こうしてパラレルSCSI規格のSCSIは終焉を迎えたのです。

パラレルからシリアル、そしてSASへ

何故今頃シリアル方式なのかと思われる方もいらっしゃるかも知れません。かつてはシリアルインターフェイスがいたるところにあり、珍しくもなかったからです。これは、集積技術の進歩により、高性能の信号処理回路のコストが低下したことに起因します。集積技術の向上がシリアルインターフェイスには応用できても、パラレルインターフェイスには仕様上適応できなかったのです。
そうしてパラレルインターフェイスをよそに、シリアルインターフェイスは日に日に進化し、USB、IEEE1394など再び脚光を浴び始めました。そしてその流れはディスクドライブのインターフェイスにも到来し、当時パラレルSCSIが抱えていたシンボル間干渉の問題、スキューの問題、サーバの通気性を妨げる大型コネクタの問題などを一挙に解決したのです。
このシリアルデータ転送方式を採用したSCSIを、Serial Attached SCSI(SAS)と呼びます。
SASは、規格化の途中で既存のシリアルATAのコネクタと互換性を持ち、SASコネクタでSASドライブ、SATAドライブの両方をサポートしました。そしてデュアルポートを持ち、冗長性、リンクアグリゲーションを可能にし、SASエクスパンダの導入で複数台の接続も可能にしました。
限界にきていたSCSI規格は、シリアルと言う新たな力を得てさならる飛躍を遂げたと言えるでしょう。
今後、パラレルSCSIデバイスはどんどんとSASデバイスへと移行していくことと思われます。

パラレルからシリアル、そしてSASへ

最後に、SASの特長と基本的仕様をご紹介し、高速チャネル伝送方式の代表とも言えるFCとの比較を行います。

拡張性

SASは従来のパラレルSCSIに比べると、ケーブル長が8mと短くなっています。
ですが、現在のSCSI機器の使用で、ホストコントローラーと周辺デバイスの距離が8mを超えることがまずないことから充分な長さと言えます。万一、8m以上の長さが必要になれば、SASエキスパンダを用いることで距離を延長することができます。SASエキスパンダはSASデバイスの複数台接続を可能にするもので、最大128台のSASデバイスを接続できます。

信頼性

SASが対応するマルチイニシエーターは、外付けRAIDストレージシステムでは一般的となっているコントローラーの冗長構成の設計ができます。そしてSASは20年以上の歴史を持つSCSIコマンドを持ち、可変セクタ・サイズをサポートしていますので、SATAと比べると非常に強力なエラー検出、高度な処理が可能になります。

汎用性

SASのコネクタはSATAと同じ物理層をカバーし、互換性を持っています。SASはSATAが半二重通信であるのに対し全二重通信をとります。また、一つのポートに一つの物理リンクを使用するナローポートと一つのポートに複数の物理リンクを使用するWIDEポートの2つの接続形態を備えています。WIDEポートで3Gb/sの速度を持つSAS物理リンクを4本まとめれば、最大12Gb/sの速度を可能にします。

以下は、同じチャネル方式を持つFCとの比較表です。

SAS

FC

接続形態

リンクアグリゲーション
(WIDEポート)
フルデュプレックス

フルデュプレックス

速度

3Gb/s

2Gb/s

ケーブル長

8m

15m

接続台数

128
(エキスパンダ使用)

127

サポート

SAS、SATA

FC

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